子どもの力、大人の力

 

 

 

 

つい最近出会った女の子。

 

彼女が生きてきた世界は本当に親が見せてきた世界のみで、親が全てだったのだろうということがすぐにわかる。

 

親がOKしたものしか見てこなかった、してこなかった彼女。

 

 

 

その彼女が、親の存在がみえなくなった状態でやってきた。

 

今までただただ信じついてきたものがなくなり、こんなところではやっていけないと大騒ぎ。

 

当然、指摘や注意を受けることが続き、ただでさえどうしてよいのかわからない中で自分が否定されていく事へのやりきれない、また言葉にできない感情を爆発させる・・・。

悪態をつき、投げやりになり、味方でさえもお手上げにしてしまう騒ぎ方。

 

 

 

掃除の時間。

 

掃除機の使い方がわからないのに、周りはどんどん勝手に話を進めていく。

 

彼女の分担が勝手に決められた!

 

どうすればいいの?

どうやってするの?

でも聞けない。そして一暴れ。

 

クールダウンのために抑えられ、その間に周りの子どもたちは離れていき、

一人残った彼女はまたどうしていいのかわからなくなり、膝を抱える。

 

 

 

様子を見にやってきた大人に、彼女は

 

「もうやった」

 

と嘘をついた。

 

 

 

その大人は、

 

「あら。もうできたの?じゃあ片づけお願いね。」

 

とその嘘を受け取った。

 

 

 

彼女は「わからない」に捉われ暴れる事はなく、自分なりのやり方で掃除機を片づけた。

 

片付いた掃除機を見たその大人は、拍手をしながら

 

「お!できてる!」

 

と伝えた。

 

 

 

その大人がしたことはなんだろう。

 

ただただ、ありのままに「もうした」という言葉を受け取り、次の仕事を伝え、そしてまた「できてる!」と承認しただけだ。

 

今の彼女に必要な「受け入れてもらった」という感覚を味わうことを優先し、彼女に小さなチャレンジを伝え、彼女なりのやり方でやってよいと思える間()を提供しただけだ。

 

それまでに、彼女の能力がどれぐらいあるのかを、判定テストの数字ではなく自分の目で観察していただけだ。

 

 

 

その後、彼女は「友達はどうやってつくればいいのか」と大人に相談し、それへの答えを実践し、仲良くなった友達と一緒に自分たちで歌を作りそれを発表しようとしている。

 

 

 

「できない」「わからない」に捉われて暴れていた彼女が、初めてのことにチャレンジし続けている。

 

この間、5日である。

 

 

 

なんて柔軟でのびやかな力をもっているのだろう!と感嘆してしまうほどの

子どもの底力!

 

それを生かすも殺すも大人次第だと、身が引き締まる。

 

 

*****

 

 

その後。

 

彼女はまだまだ試行錯誤中です。

 

変わる事を要求されじたばたしています。

 

周りの大人は、何のために変わる事を要求しているのかを確認し、それを伝える力があるかを試されています。